院長ブログ

本当の脂肪のかたまり <皮下のできもの 脂肪腫 しぼうしゅ リポーマ>

先日のブログで皮膚に良く出来るできものの粉瘤(ふんりゅう)「脂肪のかたまり」と一般に広く呼ばれているという説明を致しました。ところが粉瘤には脂肪の成分は全く含まれていません。絞り出したときに中から白い粥状のものが出てくるので古くからそういわれているのかも知れません。実際に「脂肪を絞り出す」という表現を使われる患者さんも多くいらっしゃいます。

さて、今回は本物の脂肪のかたまり=脂肪腫(しぼうしゅ、リポーマ)についてです。粉瘤と脂肪腫は明確に区別して診断しなければなりません。なぜなら、切除・摘出の方法が全く異なるからです。粉瘤は皮膚から出来るできものですが、脂肪腫は皮下(ひか、皮膚の下)に出来るできものです。つまり粉瘤は皮膚のできものなので皮膚を切除する必要がありますが、脂肪腫は皮膚を切除する必要が無く皮膚切開のみで手術を行います。

ここで症例の紹介です。つい先日手術を行った患者様から快く症例写真の使用許可を頂きました。本当にありがとうございます。これから手術を考えている患者様にも参考になる事と思います。

脂肪腫(術前)
脂肪腫(術前)

近接撮影なので部位がわかりにくいと思いますが背中の右側です。

脂肪腫が土のだかわかりますでしょうか?

脂肪腫の輪郭をマーキング
脂肪腫の輪郭をマーキング

わかりやすい様にマジックでマーキングしてみました。

大きさはおよそ12cmほどでした。

この程度の大きさであれば全く問題なく局所麻酔で手術可能です。

入院の必要などは無い日帰り手術が可能で、術後も普段通りの日常生活が可能です。

切開線デザイン(脂肪腫)
切開線デザイン(脂肪腫)

切開線のデザインです。

皮膚と癒着していませんので皮膚切除の必要は無く、シワに沿って切開のみで行います。

ここが粉瘤の切除手術と違う点です。

そして、手術に慣れていれば、脂肪腫よりも小さな切開で摘出する事が可能です。

さて、こんなに大きな脂肪腫よりも小さな傷口から摘出が可能だと思いますか?

脂肪腫(肉眼)
脂肪腫(肉眼)

摘出した脂肪腫で10cmほどあります。これが本当の黄色い脂肪のかたまりです。

切開の長さと脂肪腫の関係がわかりませんね(すみません写真を取り忘れてしまいました)。

脂肪腫より小さな切開
脂肪腫より小さな切開

同じ背部右側に出来た脂肪腫で別の患者様の写真です。皮膚切開よりも脂肪腫の方が大きいです。

脂肪腫は摘出後に少し縮こまるので、実際の大きさは皮膚にうっすら残る点でマーキングした大きさです。

皮膚縫合ドレーン(脂肪腫)
皮膚縫合ドレーン(脂肪腫)

皮膚を縫合した状態です。傷跡が綺麗に治る様に皮膚をわざと盛り上げて縫ってあります。

また、右端の緑と透明な管がドレーンという余分な血液を抜くための管です。

これは毛細管現象を利用して血液を体の外に出すペンローズドレーンというタイプです。

これが手術の一連の経過になります。

脂肪腫のことや皮膚・皮下組織・筋肉などに対する知識が十分であり、そして手術の高い技術をもっていれば小さな切開から大きな腫瘍を取り出す事が可能になります。

皮膚を切開する事は傷跡が残るという事なので、なるべく小さな傷跡の方が皆さんも嬉しいと思いますし、我々も特殊な技術者として腕を振るう甲斐があります。

病気だからといって単に腫瘍を摘出して治れば良いという考え方もありますが、形成外科医そして美容外科医である私はそれは間違いだと思っています。

形成外科や美容外科では手術後に残る傷跡の事についても患者さんの身になって配慮する事の出来る診療科なのです。

少しでも奇麗に!

少しでも小さく!

そういう事を考えながら日々手術を行っております。