犬も歩けば美容外科医に当たる
千万無量の美容外科医
美容外科医飽和時代に思うこと
医師になって30年
美容外科医になって30年
開業美容外科医になって10年
私の自己紹介と現在の美容外科業界について思うことを綴ります。
また少し長めです。
少し前からXで情報を発信するようになってあらためて、いま日本に美容外科医がとても多いことを感じています。
Xを見るようになっていろんな「オラオラ!」が勝手に目に入ってくるからです。
一般に美容外科医になる経路は現状主に下記の3通りだと思います。
- 形成外科出身の美容外科医
- いわゆる直美の美容外科医
- 他科から転科してきた美容外科医
形成外科医は形成外科出身である優位性をアピール、直美の先生は所属施設のマスでの集客力を武器にした「No.1」アピール、転科組の先生は美容医療と無理やり関連づけたような得意分野のアピールをすることでみんな集患に必死です。
ここで患者であるみなさんが忘れてはいけないことがあります。
形成外科医も直美の医師も転科組の医師も、そもそも美容外科のトレーニングなんて全く受けていないということです。
「俺はすごい」「自分は優れている」といくらアピールしても所詮どんぐりの背比べなのです。
美容外科医に成ったはいいけど、大奥の医師は自身に美容医療の経験が無いため、大手美容外科や既存の有名美容外科で数年修行して、ベテランぶって自院を開業するわけです。
たかだか数年でです。
ひと昔前までは美容外科医は医師の中で馬鹿にされていました。
(今でもそうかもです?)
「美容外科に行くやつなんか医師なんかじゃない!人間のグズだ!」という風潮がありました。これは間違い無く有りましたし、なんと形成外科医の中でも美容外科医を見下していたのです。
いまだってそういう医者はたくさんいますし、患者さんが被害に遭うケースもあります。
美容手術を受けた患者さんの中には術後のトラブルなどで、やむなく近隣の一般の病院を受診したことがある方がいると思います。その際に、美容外科患者だからという理由で不快な対応をされた経験は有りませんか?
そんな風潮だったので形成外科の中からも一部しか美容外科医にはならなかったという歴史があります。
ところが最近になりひとたび「美容医療はお金が儲かる」とわかるや否や、手のひらを返したように形成外科医、皮膚科医、眼科医、その他の診療科の医師が、今まで馬鹿にしていた美容医療にこぞって進出し始めました。
ここで自己紹介も兼ねて、私自身の美容外科医としてのトレーニングがどのようなものであったかをご紹介します。
(自慢したいわけではなく、その後の説明のための参考にしていただきたいだけです。)
私の美容外科医としてのスタートは30年前に北里大学形成外科・美容外科に入局したと同時に始まりました。
当時は「美容外科」を標榜している大学病院は2〜3施設しかなかったと記憶しています。
美容外科学という学問を学ぶことから私の医師としての経歴はスタートします。
当時の大学病院で美容外科のスタッフであった大竹尚之先生の元には全国から美容手術後の修正治療を求める患者様が押し寄せていました。
美容の手術だけで毎週、全身麻酔4件程度、局所麻酔6件程度の手術を行なっていたと記憶しています。
大竹先生の外来診療は大学病院にも関わらず、溢れる患者数のため毎回20時過ぎまで終わらず、われわれ美容チームのレジデントは大竹先生の横について診療助手を勤めていました。
次週行われる美容手術の術前カンファレンスでのプレゼンテーションと上級医からの質問攻めに備えた勉強、手術日の朝行われる手術のプレゼンテーション、そして手術翌日朝に行われる術後のプレゼンテーションに追われる日々を過ごしました。
週1回の教授回診では美容手術においても全ての患者情報を暗記して説明することが必須に求められ、手術計画、デザイン、術後経過、処置などについて厳しく評価されます。
当時のBoss(塩谷信行先生)から不十分な治療計画や手術について叱責され、「エステティックマインドを持って診療にあたること」や「メスで心を癒すこと」などを徹底的に叩き込まれました。
そういう日々を形成外科専門医を取得する資格を得るまでの6年間続けるわけです。
そしてもう一つ、私の美容外科医としての経歴に欠かせないのが、医師になって1年目から美容外科クリニックでアルバイトを行っていたことです。大きな声では言えませんが、数少ない休日を利用して医局や大学に内緒で大手美容外科や先輩の美容外科クリニックで働いてていました。当時、サービス残業は当たり前で研修医のお給料は時給にして500円に満たない生活をしていましたので、お金欲しさに美容外科で1年目からこっそりアルバイトをしていたわけです。そこでは大学の美容外科学とは違う、現場の美容外科を学ぶことができました。
形成外科専門医を取得した後、博士号取得のための研究、小児先天異常、頭蓋顎顔面外科、頭頸部再建外科などの専門診療をおこなっていましたが、常に美容医療には携わっていました。
そんな中、2015年から個人開業の美容外科としてリビジョンクリニックの前身の池本形成外科・美容外科をスタートします。
そもそも私の美容外科人生は医師1年目から修正希望の患者様を治療するところから始まりましたので開院当初から美容外科手術後の修正治療を行うことをメインにクリニックを立ち上げました。
それは、希望を持って美容手術に臨んだにも関わらず、不幸にも手術結果が思わしく無く、社会生活が、人生が止まってしまっている患者様、引きこもってしまっている患者様をなんとか社会復帰させてあげたいと言う強い思いから始めたことです。
これは塩谷先生、大竹先生から与えられた使命だと思い修正治療に生涯を捧げ、いまはクリニック名をリビジョンクリニックとして診療を行っている次第です。
私が開業した10年前は美容外科手術後の修正治療を行うクリニックは東京でも数件でした。ところが今はどのクリニックも修正治療、他院修正という項目を掲げています。
行くところがなくなり、将来の展望がなくなった形成外科医がnon形成外科の医師に対して差別化を図り、優位性を得るには「他院修正」というテーマは打って付けだったのだと思います。
何が言いたいのか不明瞭になってきましたのでまとめます。
このように美容外科医歴、修正治療歴が30年ですが、それでもうまく行く手術、うまくいかない手術、満足される患者様、満足されない患者様がいらっしゃいます。
私がみなさまに伝えたいことは、患者満足度という点では美容外科戦士30年ものの私も含めてどんな形成外科医も、新卒美容外科医も所詮どんぐりの背比べなので、目や耳に入ってくる情報を信じ過ぎないようにしてくださいということです。
言い換えれば、どうか美容外科医を信じすぎないようにしてください。
多くは金に目が眩んだ医師の集まりです。
そういう意味では「美容外科に行くやつなんか医師なんかじゃない!人間のグズだ!」はあながち間違いでは無いのかもしれませんね。
ネット上の情報は医師からも治療を受けた患者からも、それぞれの一方的な発信に過ぎません。
良い情報も悪い情報も発信者にとってはそれぞれ事実なのです。
でもそれが真実とは限らないのです。
私は医師なので、患者側が発信する事実を認めてあげることがとても重要だと考えています。したがって、患者側が発信することにいちいちSNS上で反論するようなことはしたく無いわけです。
池本のことを心の底から恨んでいる患者様がいらっしゃることもX民の皆様はとてもよくご存知だと思います。
それでも私は美容外科医である限り、整形の失敗で死にたいほど悩んでいる方をどうにかして救ってあげたい、平穏な日常を取り戻してあげたい、過去の手術を無かったことにしてあげたいと心に誓って美容外科医を続けています。
そしてみなさまにとっての最高の美容外科医に巡り合えることを祈念しています。
私のことをもう少し知りたいと思っていただいた方は過去のブログも参考にしてください。
https://micocoro-ikb.jp/blog/697